Researcher

研究者

犠牲者をつくり出さない地球社会へ

藤原辰史
人文科学研究所

私は、地球という惑星の現代史を「犠牲」という観点から研究し、叙述してきました。この数百年の高度産業社会は、ゴム、カカオ、バナナ、大豆、綿花などの農園、石炭や肥料やプルトニウムを掘り出す鉱山などで暴力を用いて働かされた労働者の犠牲と、森林、土壌、海洋、水源の大規模な破壊によってしか成り立ってきませんでした。人間存在の尊厳を謳う近代社会はしかし、奴隷や男性以外の性や支配した民族などを“劣っている”とみなし、人権の外に置くことでようやく発展を遂げることができました。私が「世界犠牲システム」と呼ぶこのような構造の歴史と仕組みを社会に示すことで、深刻化するばかりの人間と自然の同時的破壊を一日も早く終わらせることに微力を尽くしたいと思っています。

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